( 経済と地域社会の発展)
市原中央ロータリークラブの皆様には、日ごろから社会奉仕、地域貢献活動を通じまして、市原市政の推進に多大なるご尽力を賜り、厚くお礼申し上げます。
また、本日は、このようにお話の機会を設けていただきまして、誠にありがとうございます。
さて、私は、市長就任から約4か月が経過したところであり、お蔭をもちまして、大変密度の濃い日々を過ごさせていただいております。
これまで市議会議員3期12年を通じまして、市政の発展に向け取り組んできたところでございますが、市長に着任し、この間、市政運営に取り組む中で、現在の市政の深刻な状況を改めて確認し、今後の28万市民の生活向上と市政発展を担う市長の責任の重さを痛感いたしております。
本日は、「市原市の現状と今後のまちづくりに向けて」と題しまして、人口、産業、財政にかかわる深刻な状況をお話しさせていただくとともに、それを打ち破っていくための今後の取り組みの一旦をお聞きいただきたいと思います。
市政の状況をご理解いただき、ぜひ、今後の市政運営への更なるご協力をお願いするものでございます。
1.市の現状と将来見通し
「1.市の現状と将来見通し」についてです。
はじめに、市原市の市勢につきましては、皆さんご存知のとおり、面積は県内で1位と関東有数の広域都市であり、また、人口や財政、産業面でも各分野で県内上位に位置する、県内の中核的な都市であります。
特に、1950年代に始まった臨海部のコンビナートの形成を契機といたしまして、人口が爆発的に伸び、急速な市街地形成と、商業などをはじめとした産業基盤も確立され、都市的な発展を遂げてきたということが、市原市の特色でもあります。
○市の人口
次に、「市の人口」です。
日本の総人口は、平成20年をピークに減少に転じており、今後、急速に高齢化や人口減少が進み、今後35年間で約3,300万人が減少するとの予測がされております。
増田寛也元総務相を座長とする日本創成会議によって発表され、大きく報道された「減少消滅可能性都市」が、課題提起されたことは、皆さんもご存知のことと思います。
そこで、資料にあります市原市の直近10年の人口の推移を見ますと、国より少し早く、平成15年から人口が減少に転じております。
特に、平成23年から、直近の3年間は、その傾向が顕著であり、国の統計調査によると、平成25年の人口減少数は県内でワースト1位と大変に由々しき事態であります。
その特徴として、近隣市町村と比べ、20代から30代の女性の流出が多い状況です。
若い女性の流出は、市の住みやすさや、賑わいとも直結するものであり、非常に大きな問題と受け止めております。
進学、就職、結婚など様々な理由が考えられますが、現在、人口流出の原因等について、詳細の分析を行っているところであり、近々、その結果が出てまいりますので、それを受け、抜本的な対策を構築してまいります。
次に、「市原市の人口見通し」です。
国の人口推計では、市原市においては、35年後の平成52年(2040年)には、総人口は約22万5千人となり、現在の人口から約5万5千人の減少が見込まれます。
そのうち大きく減少するのは、年少人口と生産年齢人口です。一方、65歳以上の老年人口は、今後、急速に増加することとなります。
現在、市原市は4人に一人が65歳以上ですが、10年後には3人に一人が65歳以上となり、これは日本全体にも言えることですが、福祉や産業など、まちづくりのあり方に大きな影響を及ぼすものと考えられ、この対策も急務であります。
○市の産業
次に、「市の産業」です。
市原市の農業は、県下6位の経営耕作面積を有していますが、「農家数、経営耕地面積」は、ともに減少傾向にあります。
担い手の高齢化や耕作放棄地の対策、また、イノシシなどの有害獣対策も大きな課題であり、これまで以上に取り組んでいく必要があるものと考えております。
また、市原市の「小売販売額の状況」は、平成9年をピークに平成24年までに約3割減少しております。
昨今、近隣市の商業施設との競争激化などにより、本市商業を取り巻く環境は一層厳しさを増しているものと受け止めております。
現在、商業の拠点となるJR3駅周辺などの既存の商店街においても空き店舗が増加しており、特に、既存の中小事業者の経営基盤強化や、新たに操業を目指す方への支援が重要と考えております。
次に、「市原市の工業の状況」についてです。
これまで、本市の発展を支え、地域経済を牽引してきた臨海部のコンビナートですが、現在、国際競争の激化、国内需要の縮小など厳しい状況に直面しており、生産施設の停止や規模縮小、さらには企業の枠組みを超えた事業の再構築が進められております。
臨海部コンビナートは、関連企業や周辺の商業など本市の地域経済へ大きな波及効果をもたらしているところであり、また、臨海部にかかわる税収は、本市税収の約4割を占めております。
今後の動向によっては、本市の地域経済や市の財政運営、まちづくりにも大きく影響を及ぼします。
私も、市長就任から今日まで、各社の経営幹部の方々にもお会いし、意見交換をしてまいりましたが、今後も、国、県と連携し、臨海部企業が本市で継続して操業できるよう、その基盤強化を強力に支援していく必要があるものと考えております。
○市の財政
次に、「市の財政」です。
はじめに、「決算額の推移」ですが、歳入の太宗を占める市税は、平成9年度の604億をピークに大きく減少し、平成26年度までに128億円減少しております。
一方、歳出は、高齢化社会の進行等により社会保障経費である扶助費が、平成26年度に約219億円に達し、ここ10年で約113億円、2倍以上の大幅増となっております。
この結果、財政構造の弾力性を示す経常収支比率は年々悪化し、平成26年度決算では過去最悪の95.0%となり、財政の硬直化が急速に進行し、新たなインフラ整備など、まちづくりに用いる投資的な経費が年々減少してきている状況にあります。
今後の財政見通しとしては、まず「経常収支比率の見通し」においては、このまま推移すれば、7年後の平成34年度には100%を超える見込みであり、この結果、市税などの経常的な収入では、社会保障経費や公共施設の維持管理経費などの経常的な支出を賄えない状態となる危機的な状況であります。
また、「歳入・歳出の見通し」としては、平成28年度以降、各年度において収支不足が生じ、その額は今後10年間の合計で、およそ333億円の収支不足が見込まれるところであります。
さらに、公共施設につきましても老朽化が進んでおり、今後40年間の更新費用は、総額でおよそ9,641億円が見込まれ、今後の財政は逼迫する状況であります。
このことから、今年度の予算編成においては、市役所の幹部職員に対し、全ての事務事業を根本から点検するよう指示したところであり、今後、一層の事業の選択と集中に取り組んでまいります。
以上、非常に厳しい「市原市の現状と将来見通し」について申し上げましたが、私は、この現状を打ち破り、未来を切り拓いていくため、抜本的な市政改革と市民協働のまちづくりに、腰を据えて取り組んでまいりますので、皆様にもお力添えをお願いいたします。
2.今後のまちづくりに向けて
次に、「今後のまちづくりに向けて」ということで、今後の取組の方向性について、お話しをさせていただきます。
これまで申し上げたように、市原市は、いま人口減少、超高齢社会の進行、各産業分野の停滞やコンビナートの再編、逼迫する財政など、極めて困難な課題が山積をしており、これまでの延長線のまちづくりでは通用しない状況にあります。
このように複雑多様化する本市の課題、マイナス要素を、何としてもプラスに変え、市民の皆さんが、未来に夢と希望が描けるよう、しっかりと取り組んでいく必要があります。
幸いにも市原市は、首都圏に位置し、羽田・成田の国際空港へのアクセスの良さなど、地理的な優位性を有するまちであります。
また、歴史や文化、豊かな自然環境、我が国を代表する工場群や、ゴルフ場、小湊鐵道など、数多くの魅力的な地域資源に恵まれております。
加えて、市民の皆さんの強い団結力と、地域の課題を主体的に解決していこうとする地域の底力を持っているものと、私は確信しております。
これら市原市の総合力を最大限に発揮し、課題の克服を目指す。これを引き出すが、市長としての私の役目であると考えております。
現在、市で進めております「まち・ひと・しごと創生」の取り組みは、人口減少に歯止めをかけ、将来にわたって活力ある社会を目指すものであり、未来を切り拓く重要な核になるものであります。
今年度、地方創生先行型として、基本目標に「産業の活性化」、「賑わい交流の拡大」、「若者の定住促進」などを掲げ、各関係団体や企業と連携しながら、中小企業の支援、次世代農業の導入、地域資源を活かした観光振興などに取り組んでいるところであります。
これらの施策に更に磨きをかけ、市原市の将来ビジョンである「地方版総合戦略」と、「新たな総合計画」を策定し、課題の克服を目指してまいります。
今後のまちづくりを先導する先行的な施策を取りまとめた「総合戦略」は、今年度中にとりまとめ、平成28年度からスタートする計画です。
また、本市のまちづくりの羅針盤となる「新たな総合計画」は、今年度内に基本構想を樹立したうえで、平成28年度に具体的な基本計画、実行計画をまとめ、平成29年度からのスタートを考えております。
○基本的な考え
次に、最後のページになりますが、「将来ビジョン策定に当たっての基本的な考え」です。
はじめに「実効性を高める視点」といたしまして、3つの視点をもって取り組みます。
一つ目は、「市民とともに総合力を発揮する」を掲げ、市民や有識者など多様な人材力を活用し、議会との両輪のもと、地域資源を活かした取り組みを進めます。
この10月4日には、市民104名からなる「いちはら未来会議」の第1回目を開催したところであります。
この会議は、市原市において初の試みであり、市民の中から無作為抽出で4,000名に参加を呼びかけ、御賛同いただいた市民の参画により、市の職員とともに、将来構想樹立へ向けた議論を行うものであります。
私も当日出席しましたが、参加者は17歳から94歳までと、世代を超えて、市民、職員による活発な議論が交わされました。
未来の市原づくりに向け、大きな期待がふくらみ、大変心強く感じたところです。
加えて、中高生を対象とした「市原未来ワークショップ」を実施して、25年後の市原市長になった想定
で、将来の街づくりに提言をいただきました。
二つ目は、「人口減少の克服と、人口減少への対応を両面から取り組む」ことを掲げております。
若者の結婚・出産・子育ての希望をかなえるなど、人口減少に歯止めをかける積極的戦略に取り組む一方、人口減少社会や少子 高齢化に対応する福祉のまちづくりなどの調整戦略を、併せてバランスよく進めてまいります。
三つ目は、「成果重視」です。
計画と行財政システムを連携させ、効率的な行政運営を行うとともに、戦略的な広報活動や近隣自治体との広域連携を推進し、市原市の魅力を高め、市民の皆さんが成果を実感し、誇りや愛着が持てるよう取り組んでまいります。
次に、基本的な考えの2番目として、今後重点的に進める施策の方向性です。
「地域の活力・魅力・価値の向上」「地域の支え合いや福祉・健康の向上」「生活や産業を支える都市形成と環境」「子育て・教育の向上と女性の活躍推進」の施策を柱とし、また、これらを推進するため、先ずは、民間の経営感覚で、徹底した行財政改革を進めます。
具体的な内容は、今後、市民の皆さんとの議論のうえ構築してまいりますが、これらを基本的な考え方として、出来ることからスピード感をもって実行するとともに、メリハリと実効性のある将来ビジョンを策定してまいります。
(結びに)
結びに、人口減少などの本日掲げた課題は、一朝一夕に克服できる問題ではないと認識をしております。
しかしながら、そのような暗い未来ばかりではありません。市原市には、明るい希望の種もたくさんあります。
小湊鉄道においては、この秋にトロッコ列車が運行される予定であり、観光をはじめ地域経済への大きな波及効果も期待され、これを契機に市民団体の動きも活発化してきております。
また、臨海部企業においては、マザー工場化や新たなエネルギー基地構築への動きもあります。
さらに2020年東京オリンピックの前哨となる、ソフトボール世界選手権の会場誘致の話題もあるなど、民間企業や市民の動きも、非常に活発となっております。
私は、このような好機を逃すことなく、最大限に活かし、市原の力を結集して、明るい未来へとつなげられるよう、不退転の決意で取り組んでまいります。
今後とも、皆様には、未来の市原づくりに向け、格段のご協力を賜りますようお願い申し上げ、結びの言葉とさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。
ニコニコ報告:
出席報告:
在籍者数:47名
出席者数:27名
本日の出席率:64.29%
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