点鍾 :井上会長
ソング :手にてつないで
司会 :根本SAA
お客様
:落語家 林家つる子様

本日の卓話 落語家 林家つる子様
本日の卓話 落語家 林家つる子様

皆さま、本日は大変貴重な機会をいただきまして誠にありがとうございます。ご紹介にあずかりました私、落語家の林家つる子と申します。この落語家という職業についた経緯ですとかあるいはいま落語家として挑戦をしている事今日はそんな話を皆さまに聞いていただきたく拙い話ではございますが少しの間耳を傾けていただけましたら幸いでございます。
皆さまも今日初めて私の事を見たよという皆さまがほとんどだと思いますが女性の落語家恐らく全人類の中でも非常に珍しい人種ではないかと思います。女性の落語家っていたんだと思う皆さまもいらっしゃるかもしれません。
まず1番私がよく皆さまからお受けする質問の1つに「つる子さん何で落語家になったんですか?」これがいちばんよく聞かれます。私、生まれが群馬県の高崎市という所でしてこの高崎に高校生の時までずっとおりました。だけどその期間は全く落語を知りませんでした。笑点もたまに見る位かなというレベルでしか落語の事を知らなかったんですけれども高校生の頃演劇部に入っておりましてその時に表現をする楽しさ、コメディの話を演じられるのが自分は好きだなと。お客さまが笑顔になってくださる、笑っていただけるのが自分にとってはとても嬉しいこと、楽しいことだなと気付いたのがこの高校生の頃でした。なので大学に入っても演劇を続けたりとかあるいは新しい事で音楽なんかもやろうかなと思っていたんですがその矢先に私の大学が中央大学で入学した時にサークル勧誘が当初は4月に行われていました。その中で勧誘を受けてしまったのが落語研究会だったんですね。いわゆる落研でございます。この先輩方から勧誘を受けてもう半ば強制的に拉致されるような形で部室に連れて行かれましてその先輩がやっている落語というのを初めて見たんです。その時すごく自分の中で衝撃が走りました。いま申し上げた通り私は実はプロの師匠の落語を初めて見た訳ではなかったんです。その大学の先輩がやっている落語というのを初めて見て今思い返すとこれがまた良かったかもしれません。落語ってやっぱりこうおじいちゃんおばあちゃんのもの、あるいは古い物というイメージがどうしても強いかもしれませんが私が見た時に「わぁこんな同世代のちょっと若い先輩達が落語できるんだ」っていうのとその時先輩方がちゃんと古典落語をやられていたんですね。江戸時代から生まれた古典落語をやられいてそれを聞いて純粋に笑う事が出来たんですね。ちょっと人情話を選ばれいる先輩もいて人情話だったら感動したりあるいはすごくべたな明るい落語をやって思いっきり笑ったりあるいはちょっとシュールな方もいたりそれが全部古典落語でこれって人が持っている感情ってそんな昔から変わっていないんだなと私は落語を聞いて感じたんですね。昔の方もやはり同じような落語を聞いてアハハって笑ってあるいはほろっと泣いてストレス発散していた。今もそれを聞いて笑う事ができるというのは何だかすごくロマンを感じて、また落語ってその登場人物が少し弱い立場の方だったり辛い思いをしている方っていうのが主人公の事が多いんですね。その方が例えば成り上がっていくとかあるいは昔はもっと身分制度が厳しかった時代ですから上の方をちょっとけちょんけちょんにして笑い飛ばすとかあるいは恋愛男女の話もあり親子の話もありますし今も変わらない感情っていうのが落語の中にある。多分そこがすごく素敵だなと思いまして、また落語を聞いているとひとりじゃないよって言ってくれているようなそんな気さえ思ったんです。こんな素敵な伝統芸能があったんだと初めて知りましてまた演劇をちょっとやっていたのもありまして演者、演出、美術、役者色んなものをたったひとりでやる。これは究極のエンターテイメントかもしれないと思いましてこの大学時代にどんどんのめり込んでいきました。大学4年生の時、将来どうするんだという話になりまして就活も実は私しました。その就活をしている中でもちょっともしかすると落語家に自分はなりたいかもなって思いがもちろんその頃からありました。全く分からない世界なのでまた修業って厳しいってとにかくイメージだけがあってその修業がどんなものなのかも分からない、しかも成功するかも分からない、入門もどうやってするのか分からない。そんな不安がいっぱいあるその落語家という道。決めるのにはいきなりは踏ん切りが付きませんでした。経験もしたいなと思って就活をしたんですね。ちょっとこれを言うと私の年令が分かってしまうかもしれませんが就活をしていた代というのがリーマンショックが起こった年でして真面目に就活している子も全く受からないという状況の時の就活でした。その時だからこそ就活するならしっかりやらなくてはいけないんですが私の気持ちはどちらかというと落語研究会の卒業公演を疎かにしたくない、落語をもうちょっと一生懸命最後までやりたいと自分が思って就活と天秤にかけた時に思ったんですね。逆に就活をした事により自分の本当の気持ちに気づけたという部分は大きいかもしれません。だけどやっぱりハッキリと志すと決めちゃっていいのか何だか怖いなっていう思いは本当にありました。だけどここで背中を押してくれたのが私の両親、特に母です。父は心配していました。就職を一度してからでも遅くないんじゃないかとか上手くいくのかとか。でも母はすごい明るい母なんですがその母がやりたい事が決まったんだったら絶対にすぐにやった方がいいっていう言葉をかけてくれました。怖いとかそういうのはあるかもしれないけれどやりたいことが見つからないっていう事の方が正直多いんだからやりたいって事が見つかったのなら絶対に飛び込んだ方がいいよと上手くいかなかったらいかなかったでそれはその時に考えればいいんだからと言ってくれた母の一言が本当に背中を押してくれまして、お母さんが応援してくれているし噺家になる決意をしようと思いました。実は落研に入る時も私は群馬県の高校の女子高だったものですから落研の先輩方ってほとんど男性だったんです入部当初。しかも変な先輩が多かったのでこんな所で大丈夫なんだろうかと心配だったんですけれどもその時も母が「落研!面白そうじゃん、やってみなよ」その言葉が励みになってじゃぁやってみようかなって飛び込みました。
今思い返すと本当に先が見えない分からない初めてやるような事でもやっぱり飛び込んでみないと何も始まらないよな、始まらないんだなというのはこの今落語家をそろそろ14年が経ちますが続けてすごく思うところであります。あの時にやっぱり怖いなというので挑戦しなかったら今の自分っていうのはないんだなと、もちろん今も辛い事ですとか壁にはぶち当たるんですけれどもそれでも落語家になって得られたものというのは本当にかけがえのないものだと思っておりますのであの時に何だか分からない怖い世界だと思ったけど勇気をもって飛び込んで良かったなと思っております。その時に一人だと飛び込めなかったかもしれないなと本当に思います。私に場合母という身近にそういう方がいましたけど両親じゃなくても例えば皆さまの周りにお子さんでも年をとられた方でも何か新しい事に挑戦をしようでもちょっと不安だと思っている方に「大丈夫だよ、やってみなよ」って言葉を是非かけて頂きたいなと思う事ですね。振り返ってみるとそういう何気ない後押しの一言がある事で人ってとんでもない道の扉を開けたり、こちらが深い意味で言っていなくても私が言ったあの言葉がきっかけになっているということもあると思うんですね。だから怖い部分でも否定をせず挑戦したいって思っている方がどこかにいらっしゃったら背中を押してあげるこの事で本当に新しい道が切り開かれていくんじゃないかなとそんな風に感じております。
この落語家の道を志してからは卒業してから大学の入門をするまでの期間ていうのがまた不安でちょっと大変な時期でもありました。決めたからといって入門できる世界じゃないんです。師匠を探して弟子入りを認めていただけないと話し方としての生活はスタートできませんので大体その半年間寄席に通いまして色んな師匠方の話を聞いて回っておりました。これはまた今と状況が変わっているかもしれないんですがはやり女性の落語家を積極的に取ろう、育てようという師匠方がやはり少なかったんですね。落研の情報で回ってきたのもあるんですがあそこの師匠は女性の弟子入りがきたけど断ってるとかあそこの一門では破門になっているとか色んな情報が入ってきましてやっぱり弟子入りって一生に一度一回きりしかできない事ですので慎重にしかも私が指示を受けたいと思う師匠を見つけなくてはいけないな本当に先ずそこからしかもその先もどうなるか保証がない。就活が成功した子はそのまま仕事に就いて皆が上手く新しい人生を始めているという時期でしたので今思い返しても不安な時期でした。だけど本当に突然「うん」という返答がタイミングが巡ってきたなと思う時がありましてそれが志して半年後の事でした。私の師匠が林家正蔵でございます。前はこぶ平という名前でテレビにもよく出演されていました。私が師匠を寄席で拝見した時は既に9代林家正蔵という名前をお継ぎなっていた師匠でもう全くそのこぶちゃんのイメージとは違ったんですね。落語を真摯にやられている正蔵師匠の姿を初めて見て素敵だなと印象がガラッと変わった事もあってとっても自分の中で衝撃を受けた瞬間だったんです。そうして間もなく私が大学の落研に入っていた頃の顧問の先生この教授が新作落語の台本を師匠方に書いているご縁があったのが同じく中央大学付属高校出身だった柳家さん喬師匠。このさん喬師匠と当時の教授が私の話を聞いて正蔵師匠最近女の子のお弟子さんとったんだよという話をしてくださったんです。これは本当にびっくりしまして私が正蔵師匠素敵だなと思ったその1ヶ月くらい前に師匠が初めて女性のお弟子さんをとられた。私の姉弟子でいらっしゃるんですがそのお姉さんをとったばかりだったのでちょっと正蔵師匠に会ってみようというので皆さんがご縁を繋いでくださいまして師匠に会う事ができました。その時に女性の弟子を初めてとったから今育て方で迷っている。もし2人入ってくれたらお互いに相談もできるだろうしこれからいい効果を生むかもしれないから前向きに考えさせてもらいましょうというお言葉を頂けましてこれは本当にご縁とタイミングというのも本当にあるような気がした瞬間でした。やはり私の大学の先輩で落語家を志した方もいらっしゃったんですけれども志願した師匠とのタイミングがどうしてもとれなかったとかお弟子さんも新しい方をとられたばかりでできないと言われたり入門が叶わなかった方も見てきましたのでやはりここかなというタイミングがあったらまた飛び込んでみるこれも確証はないかもしれませんが何かピンときたというのももしかすると人生の中にはあるのかなと思った瞬間でした。そういったご縁が重なってやっと正蔵師匠に弟子入りすることができたんですね。
それからは修業の日々が始まりまして辛いことも本当に多かったです。右も左も分からずに入門しているので本当に毎日怒られてばっかりの日々でした。不思議とこの前座修業の間は辞めたいと思ったことはなくて前座修業の頃って師匠方の身の回りの事をやらせていただいたり自分は二の次で色んな事を吸収しようという期間ですので二ツ目になって色んな事ができるようになるまで頑張ろうととにかく決意しておりました。
皆さん落語家の階級制度というのがこれがまた厳しいのがございます。1日でも遅く早く入ったら先輩、後輩関係が決まってしまいますしとにかく上下関係が厳しいんですね。先程私が申し上げた前座から始まるんですが今私は二ツ目という身分でこれから真打になり簡単に言うとこうやって分かれています。前座、二ツ目、真打、ご臨終。この4段階に分かれております。定年が決まっておりませんから生涯現役と言う世界です。だから目指すはご臨終だというところなんですがやはり当面の目標としましては真打ですね。真打になって何が変わるの?真打になりますと寄席でとりをとる事ができる寄席に師匠の名前が書かれているのぼりが立ちましてその師匠目当てに皆さんに寄席にお越しいただくあるいはお弟子さんが来たら入門志願を受けて弟子をとることが出来る。師匠と呼んでいただける事になる。これが真打です。もちろん看板を目指して一生懸命頑張ってなろうという思いでやっているんですが本当に大変。
恐縮なんですが実は本当に最近発表があったばかりで信じられない気持ちでいるんですが実は私、来年3月21日に真打に昇進させていただくことが決まりました。もうびっくりしまして実はまだ2、3年かかるかなとでも少し早めにお声がけをいただけるという運びになりまして今日は時田さんからのご紹介でこうして立たせていただいております。千葉も京葉美装という会社の社長の国吉様という方がいらっしゃいます。その国吉様に大変お世話になりまして千葉市内のコミュニティセンターさんに2ツ目なんですが回らせていただいて落語会を開催してくださいました。2月に時田さんとご一緒させていただいた時はまだこの発表がなかったので後2、3年かかりますとあの時は言っていたんですけれども本当にまだまだびっくりしている次第なんですがもう一生懸命頑張りたいと思いますので皆さま是非、来年の3月21日から寄席でとりとしての興行が始まります。もし皆さんよろしかったらお越しいただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
落語をまだ聞いたことがないよという方もいらっしゃるかもしれません。本当にぜひお聞きいただきたいと思いましてやっぱり私が魅力に感じました今も昔も変わらない感情と言うのが落語のテーマになっていてきっと皆さまの心に落語に寄り添ってくれるのではないかと思います。また落語の良さってこれも1つあるんですね。くだらない中身のない無駄な話をずっとするそういう馬鹿馬鹿しい話を聞いているとちょっと辛いなとか悩みがあるっていう事も一瞬リセットされて頭が空っぽになってリフレッシュできるという良さもすごくあると思うんですよね。落ちを語ると書いて落語ですから落語って落ちさえあれば何でもいいんです。中身がない話もいくらもあります。一番最初に私が師匠から習った落語というのがあって「あそこの空き地に囲いができたんだってね〜へ〜」本当にこれを最初習ったんです。なんでダジャレを言うのって思ったんですが実はこれが落語の原点だと教わったんです。ダジャレってよく聞いてみると大抵会話になっております。いまのも登場人物が2人おりました。この登場人物を落語にするためには右左向いてかみしもを切って振り分けてお客様に人物の切り替えを想像していただくんです。このかみしもの切り方というのもコツがありまして手の甲で覚えるんです。手の甲の位置が落語家がかみしもを切る時の最適な高さだと言われています。
こんな話を聞いていると頭の中が空っぽになって普段の大変な事とかを忘れられるそんな時間をお届けできるんじゃないかと思うんですね。ただこの落語というのは男性の登場人物がほとんどです。女性の落語家というのは今認められてきましたけれども全国で噺家1000人いるところ60人が女性です。そんなにいるんだとお思いになった方もいらっしゃるかもしれませんがまだ1割にも満たないまたその歴史としましては今一番上の真打の女性の師匠というのが現役でとりを務められている師匠です。男性としては遥か昔江戸時代からいらっしゃる戦国時代に名前がある方もいらっしゃって武将から始まったとも言われております。その歴史から見ると本当にまだまだ浅い歴史です。だけど認められてないわけではない切り開いてきている。私もやはり落語家を目指すときに先陣を切って下さった女性の先輩方がいらっしゃるというのはすごく心強かったです。今日、女性の皆さまも沢山お越し頂いております。きっとこれから何かを挑戦したいという方にとってすごく皆さまの存在が心強かったり本当に大きなものだと思います。そして私もそういう存在になれるように今色んな挑戦をさせていただいている最中です。男性の登場人物また主人公ほとんどですがその中に出てくる女将さんあるいは花魁であったり遊女、こういった人物が出てくる話は落語の中に多くあります。だけど男性が作ってきた伝統芸能、主人公は男の方で女将さんはちょっとしか出てこない。重要な役割なのに描かれていないシーンが多い。私としては女将さんはこの時どういう感情だったんだろうですとかこの時は何をしていたのかな。これが単純に気になったというのがきっかけです。名作と言われる古典落語がありますがここに出てくる女将さんあるいは花魁を主人公にして同じストーリーの中で女将さんが主人公だったらどういう展開になってこのおちに辿り着いていたんだろうかそういった挑戦をいま続けております。中にはそんな挑戦をしなくていいですとか落語を侮辱しているんじゃないか、そんな挑戦しなくていい。そういう方もいらっしゃいました。ただこの挑戦を続けていて知ってくださった女性の方で私もいま男社会で働いているけれどもそれに合わせるのが何だか辛いと感じていただけどこの私の挑戦を知って下さって新しい道を切り開いていくほうの努力をしてもいいんだと思えて心が楽になったありがとうございますとそう言っていただいた方のご意見を耳にしまして本当に私自身も励まされました。挑戦を続けるという事が皆さまにも勇気を与えることが出来るこれは本当にやって良かったなと思う挑戦のひとつになりました。もちろん古典落語も真摯にやっていくこれが一番の目標ですが女性だからこそできる事、今も変わらない感情を持っている落語を古いものにしたくない伝統を守りつつ少しだけ新しい風を送ってまた現代、未来に残していきたいとそんな挑戦をしているところでございます。
本当に皆さまの姿ですとか応援のお言葉が私の何よりの力になっております。その皆さまのご期待に応えらるようにそしてまた皆さまにも勇気を与えられるようにこれからまた真打に向けて一生懸命頑張っていきたいと思います。皆さま本日は拙い話でございましたが耳を傾けてくださいまして誠にありがとうございます。これからも頑張ります。ありがとうございました。

ニコニコ報告:
<時田清次会員>
林家つる子様、本日は楽しいお話ありがとうございます。今後も御活躍を期待しております。

<北村謙介会員>
林家つる子様、本日はありがとうございました。同じ中央大学の先輩のご活躍大変嬉しく思います。益々ご活躍を祈念しております。

出席報告:
本日の出席者数20名
本日の出席率57.14% 前々回出席率80.00%

事務局:
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